は じ め に
台湾について語っていると、「どうして台湾なんだ?」と聞かれることがある。

台湾をはじめて訪問したのは1982年のこと。カメラマンとして出版社に就職したわたしは、当時入社6年目。気力・体力は充実していたのに、なにか活かされていないような、もどかしい気持ちがあった。依頼される仕事ではなく、「自分の作品」を作りたいという思いが日増しに強くなっていたのである。そんなとき、おもしろい祭り(北港の媽祖の生誕祭)があると聞いて、台湾に行くことにした。

そこで強い印象を受けたのは、人びとの信仰心の篤さとバイタリティ、そして1945年までの半世紀の間日本の植民地でありながら、大変な親日国であることだった。

台湾を見ていると、日本がよく見える。いや、よく解かる。日本の良いところも悪いところも明瞭になる。このことが長年通い続けている理由だと思う。

この25年間に、台湾は独裁国家から民主国家へと変貌を遂げた。また、1985年には「台湾人元日本兵」を取材したが、それを通して戦前の日本の価値観に触れたことで、確執のあった亡父のことが少しは理解できるようになった気がする。

ずっと書籍版写真集を出したいと思っていたが、ひとりでも多くの人の目に触れることを願って、作品をウェブで公開することにした。

この「写真集」を見て何かを感じて、台湾というクニに親近感を持ってくれればと願う。

1982〜2005年までの写真はカラーポジフィルムを使用した。ウェブ用のデジタル化に際しては最善を尽くしたつもりだが、熟練不足による不備はご宥恕願いたい。これからも折に触れて内容を増やしていく予定なので、乞うご期待!

最後に、厳しい国際環境の中にある台湾の平和と繁栄を祈る。

河野利彦 2007年10月記

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