独裁者像の墓場 慈湖紀念雕塑公園
台湾人李登輝元総統による民主化により各地で撤去された蒋介石像が
風光明媚な桃園県大渓鎮慈湖に集められ、150体あまりが展示されている。

1949年に大陸での国共内戦に敗れた国府軍の領袖蒋介石は、
台北を臨時首都として入台し、終身総統になった。
二二八事件を武力で鎮圧し、白色テロの専制恐怖政治で
多くの台湾の人びとを殺害した。
そして領袖崇拝のために自分の像を台湾各地のロータリーや名所旧跡に設置した。
また像だけでなく各地の主要な道路や施設に「中正」と自分の名前をつけた。

桃園県観光局のサイトは、「偉業を偲ぶことができる」と肯定的に書いている。
確かに、これらの像を見て蒋介石を懐かしむ人もいるだろう。
だが、薄笑いを浮かべたかつての権力者の銅像が一箇所に展示されている光景に、
異様さと滑稽さ、人間の醜悪さ、さらには抑圧された人々の怨念さえ私は感じる。
同じように感じる台湾人も多いのではないか。

人里離れた山の中に居並ぶ蒋介石像。これは偉大なるアイロニーだ。

河野利彦(撮影 2008年12月)

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